- 移行モデルを採用したSML6ソフトウエアにより、プラスチック多層包装の有機物質が食品疑似溶媒に移行する拡散速度と分配係数を評価できます。
- SML6による解析結果は、プラスチック食品接触材料 および食品包装材がEU規制およびスイスの法律に従って特定移行制限に準拠するエビデンスとして保証されます。
- 移行プロセスのシミュレーションは、拡散速度がFickの拡散第2法則に従うことに基づいています。
- SML6は、任意の温度モードと時間での移行プロセス・ミュレーションが可能です。
- SML6は、印刷物のSET-OFFと云われる裏写り現象の評価を可能にします。
- 更新されたポリマーのマスターデータベースと必要に応じてユーザーデータベースの構築が可能です。
- SML6は包装パッケージ・デザインの改善に役立ちます。
この移行モデルを決定するために過去に測定された代表的な食品包装材ポリマーについて、ポリマーに含まれる数多くの移行物質(添加剤、劣化防止剤や有機物質など)の膨大な溶出試験データを検証することからスタートしました。EU諸国の公的機関が研究プロジェクトを組み、ポリマー中の移行物質(Migrant)がどのように食品疑似溶媒(Simulant)に移行するプロセスを理論的に解明しました。その結果、食品包装材から有機物質が食品に移行する現象を”移行モデル”として集大成されました。
この移行モデルをAKTSがMDCctec system社、スイス連邦食品安全獣医局(FSVO)とともに共同開発したソフトウエアがAKTS SML6です。
SML6ソフトウエアが対象となる食品包装からの溶出量が規制値の特定移行制限を越えるか、あるいは越えないかの判定が可能なのか?の概略をFig_01、Fig_02、Fig_03のイラストで紹介します。
更にSML6の背景から応用まで詳しい解説はAKTS社のHPをGoogle Chromeプラウザにすれば英語ページが日本語翻訳されて閲覧が可能です。 Migration(移行)が“移民”と和訳されたりしていますが、それも愛嬌と許容していただければSML6の解析手法の全貌を理解することができます。
拡散現象とはポリマーフィルムの上層に茶色物質と下層に灰色物質が配合されているとします。
Fig_01
ポリマー内部の有機物質(Migrant)が物質移動する拡散現象であり、Fickの第2法則に従うとされています。Fig_01の赤文字のDは拡散係数です。
図のなかのPはポリマー物質、Mは接触溶媒を意味します。拡散係数は移行物質(Migrant)のサイズ、温度に依存します。分子サイズが大きければ(分子量が大きければ)、拡散速度が小さく、分子量が小さければ拡散速度が大きくなります。
Fig_02
拡散速度は温度に依存し、拡散係数はアレニウス式に従うことが知られています。
拡散式は移行現象がどれだけの速度で起きるかを表します。
Dの単位は平方cm/秒です。
AKTS SML6は移行モデルの基礎となるPiringerのAp_Valueモデルから汎用ポリマーと移行物質の間の拡散係数を推定する手法やTg温度による拡散係数の推定手法を採用しています。
Fig_03
一方で食品接触溶媒(疑似溶媒)にどれくらいの量が移行するか?を決定するのが分配係数です。移行物質(Migrant)と疑似溶媒(Simulant)の間の分配係数KP,Mを推定する手法が重要です。
P,M のPはPartition(分配)を意味し、Mは疑似溶媒(接触溶媒)のMediumのMです。
KP,M に代えてKP,fと記載されることもあります。この場合のFはFOODという意味です。
Fig_03では KP,M は(無限時間の平衡状態におけるMigrantの量の比)=(Migrantのポリマーに対する溶解度とMigrantの疑似溶媒に対する溶解度の比)であるとしています。しかし移行物質(Migrant)のポリマーに対する溶解度のデータは入手困難であるため、SML6はMigrantのLog Pow値(オクタノール/水の分配係数)から疑似溶媒との分配係数を推定する手法を採用しています。
SML6によるシミュレーションのkey wordは拡散係数関連では、Piringer式、Migrantの分子量、溶出条件の温度と時間、分配係数関連ではMigrantのLog Pow値からPowアプローチによるKpfの推定 これらを理解すればSML6を使いこなすことができます。