AKTSのTKsd (ThermoKinetics Sparce Data 間引きデータによる反応速度論解析)を使って車載用リチウムイオン電池の寿命推定を試みました。
保管寿命や貯蔵寿命あるいは使用寿命は使用される温度条件に依存し、アレニウス式に従うことが知られています。ここでTKsd_Thermokinetics(寿命推定モード)は加速試験で得られる数少ない測定データから劣化反応モデル式と活性化エネルギーを算出して寿命評価をすることができます。 TKsdのsはsparce、dはdataを意味し、直訳すれば間引きデータによる反応速度論解析と言えます。
ここでリチウムイオン電池の容量維持率の加速試験データから寿命推定を試みます。
劣化反応はアレニウス式に従うことから、異なる温度条件の加速試験データがあれば活性化エネルギーを算出できます。加速試験データから寿命予測する場合、一般的には推定される劣化反応を仮定して
加速試験データから得られた活性化エネルギーから、寿命推定をします。ここで問題になるのはこの仮定された」劣化反応式が正しいかどうかです。
反応モデルが判明している場合は良いのですが、劣化反応のように反応式が明確でないときは予測に使うべき反応モデルを十分に検討する必要があります。
AKTS_TKsdは赤池情報量規準を使って最も妥当性のある反応モデルを探索します。妥当性のある劣化反応式と活性化エネルギーを使って、10年先の劣化の度合いをシミュレーションします。
寿命予測機能はAKTS_Thermokineticsの旧Version4.231までは計算に半日を要しました。VTKsd_Version5.51では計算アルゴリズムの大幅改良により、1~2時間で計算が完了します。
リチウムイオン電池の寿命評価の本題に戻ります。 上段に示すリチウムイオン電池の保持試験データは一種の加速試験です。電池の容量維持率の減少速度に温度依存性があることを示しています。18℃から55℃までの5段階の等温条件で30ヶ月におよぶ測定データから反応モデル式と活性化エネルギーを算出します。このパラメータを使って、さまざまな温度条件での5年先、10年先の寿命(容量維持率)を予測が可能になります。
お持ちの加速試験データで寿命予測をしてみたいと希望される方は!
必要な加速試験データは温度条件として 3条件、測定データは各温度条件で 10数点 合計 40~ 50点程度の測定データがあれば解析が可能です。
ただし寿命とされる劣化率に近い変化まで比較的高温条件で測定されているデータがあると良いです。逆に劣化率が寿命となる劣化程度より低い範囲の測定データしか得られていない場合は寿命予測精度、信頼性が低くなります。
AKTS社や共同研究者が投稿した文献、およびAKTSユーザが投稿した文献が約70編あります。